今回は、前回のブログの続きで、QNAP製NASの基本設定について説明します。
今回のブログでは、バックアップ方法について詳しく説明します。
バックアップの種類
QNAP製NASのバックアップは、「HBS 3 Hybrid Backup Sync」を使用します。こちらのバックアップソフトには、大きく2種類のバックアップがあります。
- 同期
- バックアップ
また、バックアップ先のデバイスとして、「ローカルNAS」や「クラウドサービス」等様々な種類があり、同期の種類によって使用できるデバイスが変わります。
1.同期
同期は、NASのデータを、外部デバイス又はクラウドサービスに保存する機能です。同期には3種類の同期があります。
- 一方向同期
- アクティブ同期
- 双方向同期
一方向同期
一方向同期は、NASのデータを別のデバイス等に保存する機能です。
バックアップ先デバイス
バックアップ先デバイスとして使用できるのは、下記6点です。
- ローカルNAS
- リモートQNAP NAS (RTRR)
- Rsyncサーバー
- FTPサーバー
- CIFS/SMBサーバー
- クラウドサービス
双方向同期
双方向同期は、ローカルのNASとリモートのQNAP製NASのデータ又はクラウドサービスのデータを双方向に同期します。
バックアップ先デバイス
バックアップ先デバイスとして使用できるのは、下記2点です。
- リモートQNAP NAS (RTRR)
- クラウドサービス
競合ポリシー
双方向同期の場合、ローカルとリモート又はクラウドのデータと競合が発生します。競合ポリシーとは、同時に同じデータが読み書きされた場合、どのように処理するかのルールです。競合ポリシーには、下記5つがあります。
- ローカルファイルの名前を変更する
- ローカルファイルを置き換える
- リモートファイルの名前を変更する
- リモートファイルを置き換える
- 古いファイルを上書きする
アクティブ同期
アクティブ同期は、リモートQNAP製NASまたはクラウドのデータをローカルNASに保存する機能です。
リモートデバイス
バックアップ先デバイスとして使用できるのは、下記2点です。
- リモートQNAP NAS (RTRR)
- クラウドサービス
クラウドサービス種類
2022年7月時点で使用できるクラウドサービスは下記33サービスになります。
- Amazon S3
- Azureストレージ
- Backblaze B2
- Baidu Wangpan
- Box
- Catalyst Cloud
- Cynny Space
- DigitalOcean
- DreamObjects
- Dropbox
- Googleクラウドストレージ
- Googleドライブ
- HiCloud
- HiDrive
- HKTオブジェクトストレージ
- HUAWEIクラウド
- HubiC
- IBM Cloud
- IONOS Cloud S3
- OneDrive & OneDrive for Business
- OpenStack Swift
- Oracle Cloud
- OVHcloud
- Qcloud IT
- RackSpace
- SFR
- ShareFile
- SharePoint
- Tencent Cloud
- Wasabi
- WebDAV
- Yandex.Disk
- アリババクラウド
2.バックアップ
バックアップは、世代管理を行うことができます。バックアップは、初回バックアップから、変更されたファイルを差分バックアップします。よって、「この日のデータに戻す」ということができます。バックアップの場合、バックアップ先のデバイス容量はローカルNAS容量より大きい必要があります。
バックアップ先デバイス
- ローカルNAS(の外部デバイス)
- リモートQNAP NAS (RTRR)
- クラウドサービス
「HBS 3 Hybrid Backup Sync」のインストール方法
バックアップ設定を行う際、通常、「HBS 3 Hybrid Backup Sync」を使用します。こちらのアプリは、初期設定ではインストールされていないので、「App Center」からインストールします。
App Center
デスクトップから、「App Center」を開きます。
HBS 3 Hybrid Backup Sync
サイドバーから「バックアップ/同期」を選択し、「HBS 3 Hybrid Backup Sync」下の「インストール」を選択するとインストールを開始します。
インストール後、デスクトップに「HBS 3 Hybrid Backup Sync」に保存されているので、開きます。
起動すると下記トップ画面が開きます。
HDDの接続とフォーマット
今回は、USB接続のハードディスクをバックアップ先デバイスとして指定します。USB接続を行うと、画面右上のメニューの中にある「接続された外部デバイス」上でデバイスが認識されます。
画面右上の「アクション」を選択します。
「フォーマット」を選択します。
フォーマット形式は、下記から選択します。私のフォーマット選択ポイントは、NASが使用できない時、バックアップ用ハードディスクをクライアントPCに接続してデータ救出をするので、WindowsPCが多い環境であれば「NTFS」、Macが多い環境であれば「HFS+」を選択しています。
今回は、「HFS+」を使用します。 ラベルは、任意で指定します。設定後、「フォーマット」を選択します。
同期設定手順
今回は、ローカルNASのデータを外付けデバイスに同期する方法を説明します。
1.HBS3起動→同期
「HBS 3 Hybrid Backup Sync」を起動し、サイドバーから「同期」を選択します。
2.一方向同期
今回は、「一方向同期」で設定します。画面右側「今すぐ同期」を選択し、「一方向同期」を選択します。
3.バックアップ元(ソース)デバイス
バックアップ元(ソース)デバイスを選択します。「ローカルNAS」を選択し、画面右下「選択」をクリックします。
4.ソースフォルダ選択
ソースフォルダを選択します。今回は、「share」フォルダを選択し、「OK」を選択します。
5.宛先フォルダ作成
宛先フォルダを指定します。今回、宛先デバイス「BackupRAID」にフォルダが作成されていないので、フォルダを作成します。宛先デバイスを選択後、右下のテキスト欄にフォルダ名を入力します。今回は、ソースと同じ「share」フォルダを作成します。フォルダ名入力後、右側のフォルダのアイコンを選択します。
6.宛先フォルダ選択
作成した「share」フォルダを選択し、「OK」を選択します。
7.ジョブ確認
「ジョブ名」を指定します。今回は、初期設定のまま進めます。バックアップ設定が正しいか確認後、「次へ」を選択します。複数のフォルダを指定する場合は「+」を選択し、ソースフォルダと宛先フォルダを指定します。
8.スケジュール設定
スケジュール設定を行います。「スケジューラー」を選択し、「+」を選択します。
9.スケジューリング
スケジューリングを設定します。今回は、毎日00:00から同期する設定を行います。「毎日」を選択し、開始時刻を「00:00」にします。その後、「OK」を選択します。
10.スケジューラー確認
スケジューラーを確認し、「次へ」を選択します。
11.ルール(方法)
ルールを設定します。私は、基本フィルター機能を使用し、すべてのオブション設定を有効にしています。
高度なフィルターを選択すると下記画面が開きます。私は、使用していません。
12.ルール(ポリシー)
ポリシー設定を行います。「ファイル名とフォルダー名の文字化け防止ポリシー」は、ファイルやフォルダー名にQNAP製NASが使用できない文字が使われていた場合、どのように処理するかの設定になります。「警告でスキップする」か「予約文字で変換する」かの2通りの方法です。ちなみに、QNAP製NASが使用できない文字は、「\/:*?<>|」(「」は省きます)になります。
私が設定する場合は、「警告でスキップ」を使用し、上記使用できない文字が使われていた場合は、別の文字に変えるよう依頼します。
「詳細設定」を開くと下記画面が開きます。初期設定では、全てチェックオフですが、私はすべてチェックオンにします。「ターゲットフォルダ内の追加ファイルを削除します」がポイントになります。ユーザが削除したファイルをバックアップ先に永久に保存する必要があるかどうかは、使用者に確認して私は設定しています。
設定後、「次へ」を選択します。
13.ルール(オプション)
オプション設定では、同期ジョブの挙動によって通知を送るかの設定です。私は、「ジョブ失敗」の時だけ通知が送られるよう設定します。(初期設定です)
同期ジョブが異常終了したときに、NASを再起動する設定があります。私は使用していません。設定後、「次へ」を選択します。
14.要約
最後に、設定した同期ジョブの確認画面が表示します。問題なければ、「作成」を選択します。
15.完了
作成すると、下記画面が開きます。これで、同期ジョブの作成は終わりになります。
バックアップ設定手順
今回は、ローカルNASのデータを外付けデバイスにバックアップする方法を説明します。
1.HB3起動→バックアップ
「HBS 3 Hybrid Backup Sync」を起動し、サイドバーから「バックアップ&復元」を選択します。
2.新しいバックアップジョブ
画面右側「今すぐバックアップ」を選択し、「新しいバックアップジョブ」を選択します。
3.ソースフォルダの選択
ソースフォルダを選択します。今回は、「share」フォルダをバックアップします。「share」フォルダにチェックを入れ、「次へ」を選択します。
4.保存先ストレージ
保存先ストレージを選択します。今回は、ローカルNASの外部デバイスに保存します。「ローカルNAS」選択後、「選択」をクリックします。
5.宛先フォルダの選択
宛先を指定します。今回は、外部デバイス「BackupRAID」を指定します。バックアップの場合、ジョブ名のフォルダが作成され、その中にバックアップデータが作成されます。こちらについては、後ほど実際の画面を使用して説明します。「BackupRAID」を選択後、「OK」を選択します。
6.ジョブ名指定
ジョブ名を指定します。今回は、初期設定の「Backup 1」のまま進めます。バックアップ先等を確認し、「次へ」を選択します。
7.スケジュール設定
バックアップスケジュールの設定を行います。設定方法は、同期と同じです。今回も「毎日 00:00」からバックアップを開始します。
8.バージョン管理
バージョン管理の設定を行います。初期設定は無効になっている為、有効にします。その後、何世代バックアップが必要か設定を行います。今回は、初期設定の「100バージョン」で設定します。
バージョン管理の注意点!!
バージョン管理を指定した場合、そのバージョン数を超えないと、古いバックアップデータは削除されません。例えば、保持バージョンを「100」に設定した場合、「101」回目のバージョンが取得される際、「1」回目のバックアップデータが削除されます。これは厳密に決められており、例えば、バックアップ先のデバイスの空容量が少なくなっても、古いバージョンを削除することはしないので、バージョン数の設定は注意が必要です。
9.データの整合性チェック
バックアップデータの整合性チェックの設定です。バックアップしたデータが壊れていなか等をチェックすることができます。ただし、これを実行すると、NASに対して高負荷がかかりますので、私は行っておりません。「QuDedup」を使用しない場合、「クイックチェック」は実施できません。(「QuDedup」については、「10.ルール(方法)」で説明)
10.ルール(方法)
ルールのオブション設定です。基本、同期と同じ設定です。
QNAP製NASのバックアップ設定には、「QuDedup」と呼ばれる専用のバックアップ形式があります。このバックアップを選択した場合、バックアップファイルの容量を抑えることができますが、専用のバックアップ方式になりますので、復元が必要になります。通常のバックアップの場合、生のデータが保存されるので、バックアップ先デバイスからそのままデータを復元できますが、「QuDedup」を使用した場合、一度何かのデバイスにそれを生のデータ形式に変換する復元処理が必要になるので、時間がかかります。また、「QuDedup」データは変換処理がはしるので、NASに高負荷がかかります。ハイスペック機以外での設定はオススメしません。私も基本、設定は使用しません。
QuDedupの詳しい説明はコチラ
11.ルール(ポリシー)
ポリシーの設定も、同期と同じです。ただし、「QuDedup」を使用している場合、バックアップデータをパスワードを使用して暗号化することができます。
12.ルール(オプション)
オプションの設定も、同期と同じです。
13.要約
最後に、設定したバックアップジョブの確認画面が表示します。問題なければ、「作成」を選択します。
バックアップ動作
今回は、バックアップの動作を確認する為、
1回目:「share」フォルダに「test.txt」ファイルを保存しバックアップを実行
2回目:「share」フォルダに「test2.txt」ファイルを保存しバックアップを実行
上記バックアップで、ターゲットデバイス(バックアップ先)にどのような形でデータが保存されたかを確認します。
1回目バックアップ
2回目バックアップ
・最新バックアップ
・過去バックアップ
このように、複数のバックアップを作成した際、最新のバックアップは「latest」に保存されています。バックアップ設定は、差分バックアップになるので、バックアップ先デバイスの容量は注意が必要です。
ターゲットデバイス(バックアップ先)の容量は、ソースのNAS容量の2倍から3倍程度必要になります。
まとめ
今回は、QNAP製バックアップの種類とバックアップの手順について説明しました。
バックアップの種類を決める際は、差分バックアップが必要かどうか、要は昔のデータに戻すことがあるかどうかが一つのポイントです。昔のデータに戻す方法として、スナップショットという機能がありますが、こちらについては、また別のブログで説明します。
今回説明したバックアップも含めて、QNAP製NASの基本設定は、下記8つになります。
- サーバ名
- IPアドレス設定
- サービス
- 共有設定
- 障害通知
- ネットワークゴミ箱
- UPS
- バックアップ
これからも、Macのシステムエンジニアとして、日々、習得した知識や経験を発信していきますので、是非、ブックマーク登録してくれると嬉しいです!
それでは、次回のブログで!